研究開発の効率性を測定する。

西村優子氏の論文より、

有価証券報告書で開示される研究開発戦略、特許権、ならびに技術に関する情報は、図表1のような記載区分によって、開示される。
① 連結損益計算書および単体の損益計算書で、特許料収入ならびに研究開発費の金額の開示。注記として、一般管理費および当期製造費用に含まれる研究開発費の開示。
② 連結貸借対照表および単体の貸借対照表の無形固定資産の区分で特許権の金額開示。
③ 付属明細表の無形固定資産等明細表で、特許権の当期増減額、償却額の開示。
④「第2 事業の状況」の「5 経営上の重要な契約等」の区分で技術受入契約ならびに技術援助契約の契約内容と契約期間、ロイヤリティ料の開示。
⑤「第2 事業の状況」の「6 研究開発活動」の区分で研究開発費の額の開示。
⑥ 有価証券報告書の「第3 設備の状況」の区分で研究開発投資の規模や人員が開示。
⑦ 有価証券報告書の「第2 事業の状況」の「4 事業等のリスク」の区分が新設され、リスクに関する情報の開示。


研究開発費と特許権の会計上の扱いは、

研究開発戦略に係る投資について、「研究開発費等に係る会計基準」が適用され、研究及び開発に係る費用は原則としてすべて発生時に費用処理される。費用として処理するにあたって、一般管理費として処理する方法と当期製造費用として処理する方法がある(基準注解2)。研究開発費は、新知識の発見を目的とした計画的な調査及び探求である「研究」ならびに、新製品の計画・設計または既存製品の著しい改良等の「開発」のために発生するコストであり、一般的には原価性がないと考えられるため、一般管理費として計上される。ただし、製造現場において研究開発活動が行われ、かつ、当該研究開発に要した費用を一括して製造現場で発生する原価に含めて計上している場合があることから、当期製造費用に算入することが認められる。

研究開発活動が成功し特許登録された特許権については、有償または合併により取得したものは無形資産として資産計上されるが、無償で取得した場合や社内で開発されて取得したものは資産計上の対象とはならない。研究開発を自社で行って特許を取得した場合には、研究開発の進行期間中は費用として処理され、研究開発が成功し特許出願・取得した場合には特許出願に要した費用、審査請求に要する費用、権利維持費用は特許権で処理される。特許権は一定期間で償却されて、取得原価から償却累計額を控除した残額が貸借対照表に表示される。


売上高研究開発費比率の高い業種から、さらにゴネゴネ企業を絞り、まぁ100社くらいになったとして、上記の情報を有価証券報告書から手作業で取ってこれたと仮定する。
さて、企業の研究開発の効率性が収益率向上→株価upにつながるとして、この効率性をどのように評価するか。

野村総研のテクノロジーヒットマップのレポートでは、

研究開発効率性=過去五年の営業利益の平均/さらに五年前の研究開発費の平均
            (研究開発と利益発現のリードタイムを5年としている。)

としていた。つまり、少ない研究開発費で多くの営業利益が得られる企業は研究開発効率性が高いことになる。これはこれで一理あると思われる。一方、こうした指標で図る企業というのは、研究活動が企業価値向上のキー・ファクターになる企業である。上記の業種でいえば売上高研究開発費の高い業種である。これを考慮すると、売上高営業利益率で評価することと似ている気もするがこれは違うことをいっておきたい。

さて、技術知識ストックを用いて研究開発を評価することがひとつの目玉になるわけだが、

技術知識ストックを研究開発費の積み上げと解釈すると

研究開発費の平均を技術知識ストックに変更した場合、技術の陳腐化を考慮したより精度の高い測定ができる。

さらに、積み上げた知識が企業価値の源泉と解釈するならば、

技術知識ストック、技術知識ストック/時価総額 も一つの指標になりうる。この2つの指標は大和のクオンツアナリストの吉野さんの「株式定量分析入門」に詳しい。


しかし、僕は研究開発効率性改良版を評価するものの、後者の二つを評価しない。
理由は、陳腐化率、リードタイムを考慮しているとはいえ、基本は費用の積み上げなのでこれを株価上昇の説明変数にするには、理由が乏しいし、どうして時価総額で割っているかよくわからいない。技術知識ストックを説明変数にすると、どうしても大企業ばかりがクローズアップされるし、時価で割るということは、現在の企業価値一単位に占める技術の大きさであり、若干不明確になる。

僕が提案したいのは、技術の陳腐化とリードタイムを考慮した研究開発費の積み上げである、技術知識ストックを資産と認識することである。会計上は許されず費用計上なのは重々承知であるが、近年の研究開発を資産評価しようという方向に合致したものであり、技術知識ストックは資産に近いといって差し支えないだろう。国を挙げて、資産にするにはもう少し精度を上げる必要があるが、このレポートで資産と認識することに差し支えないと考えている。

技術知識ストックを資産と認識すれば、評価するときのものさしは、

技術知識ストック/総資産 :つまり、企業の資産において技術知識のストックがどれくらい蓄積しているか。

また、資産の効率性を示す指標は、ROA=総資本経常利益率、ROE=株主資本純利益率、であるから、
さきほどの、技術知識ストック営業利益率という指標は正当化されうるだろう。


総じてまとめると、

・技術知識ストック/総資産
・過去五年の営業利益平均/過去五年から計測した技術知識ストック
の高い企業が、研究開発効率性の高い、研究開発型企業であるといえる。

つまり、total資産に占める技術知識ストックの高い研究開発型企業のうち、技術知識ストックという資産を有効活用し高い営業利益を叩きだせる企業が、株価が上昇するという話である。
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by tsuyoshi_829 | 2005-10-17 13:44 | ゼミ  

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