ABSのスワップスプレッドについて

前置き
e0046070_136358.jpgスワップ・スプレッド=ABSの最終利回り-金利スワップレート

と定義したとき、スプレッドにばらつきがあることが実証的に明らかであるのだが、スプレッドの銘柄間格差はオリジネーターや裏づけ資産の差だけでなく、オリジネーターによる劣後引き受けがオリジネーターと投資家の間の情報非対称性を解消している度合いに依存している。特に、裏付け資産の信用リスクをカバーする以上に劣後を引き受けることによってオリジネーターは、スワップ・スプレッドを縮小させるとともに、発行時のマーケット・インパクトを緩和することができる。

以下の文章によると、スプレッドについて、基本的には、銘柄間のスプレッドのばらつきはないはずである。

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格付け機関は,①法的な倒産隔離によってオリジネーターの信用リスクが完全に遮断され,②オリジネーターによって引き受けられる劣後部分が裏付け資産の信用リスクを完全に吸収していることを確認した上でAAA 格を当該ABS に付与している.したがって,もしAAA 格のABS が厳格な倒産隔離と十分な劣後引受という2要件を満たしている場合には,オリジネーター自身の信用リスクや裏付け資産の信用リスクの銘柄間の格差がAAA 格ABS のスワップ・スプレッドの銘柄間のばらつきをもたらさないことになる.
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これを踏まえると、残りのリスクとして、流動性プレミアムと裏付け資産に含まれるプリペイメント・リスクがばらつきの原因として考えられるが、

前者は横断的で、個別間に大きな差があるとは考えにくい。もちろん、ABS市場の流動性はきわめて低いので、流動性を考えることは重要である。後者について、個別に異なると思われがちであるが、ABSの満期は短く、中・短期債であり、住宅ローンの証券化商品のようにプリペイメント・リスクが重要視されにくい。しかし、今後金利の上昇局面に入り、金利のボラティリティが上昇するとこのリスクが顕在化する恐れがある。

ということで、オリジネーターと投資家の情報の非対称性に着目して分析を行った。

分析
オリジネーターによる劣後引受を,裏付け資産の信用リスクを吸収するのに必要となる部分(以下では,必要信用補完額と呼ぶ)と,必要信用補完額を越える部分(以下では,超過劣後と呼ぶ)に分けて,後者の超過劣後引き受けがスワップ・スプレッドに与える影響を検証していく。

結果
オリジネーターによる超過劣後の引き受けが高まるほど,AAA 格ABS のスワップ・スプレッドは小さくなる傾向が認められる.超過劣後比率とスワップ・スプレッドの負の相関にあるというファインディングは非常に頑健である.超過劣後部分が十分に大きいサンプルにおいても,超過劣後比率とスワップ・スプレッドに負の関係が認められることから,裏付け資産の信用リスクの残余がスワップ・スプレッドに反映していると考えにくい.さらに,超過劣後比率の標本平均周り4 分の3 のサンプルにおいては,超過劣後比率の上昇が発行時のマーケット・インパクトを緩和する傾向も認められる.

考察
第1 に,いくつかの実証結果からは,オリジネーターや裏付資産の信用リスク制御がいぜんとして完全には機能していないことが示唆されている.
第2 に,本研究の実証結果では,オリジネーターの劣後引受は単なる信用補完ではなく,必要信用補完を超過する劣後引受がオリジネーターの私的情報に起因する逆選択問題を緩和する機能を持つことが示されている.


参考文献:
ABS 発行市場における劣後引受の役割(2006)
証券化商品の格付けについて(JCR資料)
http://www.jcr.co.jp/abs/absnew.htm
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by tsuyoshi_829 | 2006-05-18 01:21  

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