人気ブログランキング | 話題のタグを見る

負債比率の決定要因(続き2)

野村「企業価値向上の・・・」のモデルは、Rajanモデルと比較して、PBRを総資産成長率(過去数年の平均を取る)で代替し、株主と経営者のエージェンシーコストの代理変数として浮動株比率を用いており、5つの説明変数となっています。浮動株比率というのは、50単元未満を保有する株主の保有する株式の割合ですが、これがエージェンシーコストの代理変数として機能するのかどうかというのが疑問です。そもそも経営者が株式を100%保有していないことから、利害不一致が発生するわけなので、経営陣持ち株比率、とかを作ったほうが早いと思いました。後は、外国人+投信の持ち株比率が高いほどエージェンシーコストが下がるとか、というやり方もあるかと思います。少なくとも90年代は株式の持合があり、株主としてデカイから物が言えるという主張はなりたたないでしょう。

買収する気のないくせに(出来たらむしろ困る)スティル等のニュースを見ていて思いますが、やっぱり単独で10%以上は持たないと影響力を行使するのは厳しいんだろうと。とはいえ、資本提携も同じ10%、数字だけ見て区別するのは難しいですね。

こうした株主構成に焦点を当てた分析は一見なるほどと思えても、定義が難しい、データがない(個別企業は有価証券報告書か会社四季報からあさることになります)、経営側が株主をどれだけ意識しているかを明示的に表現できない、といった点等から実証分析に耐えうるのかと言われると難しいところがあります。日銀の負債圧縮の論文で、最適負債比率への調整スピードλが大株主比率、外国人株主比率、個人株主比率、金融機関持ち株比率を使って表現しておりGMM推定上、統計的に有意な結果を残していましたが釈然としません。なお、金融機関持ち株比率の寄与度は0に近いものでした、負債提供・機関投資家としての2つの顔を持つからです。資本構成の調整は、調整にかかるコスト以上に調整したことによるメリットが発生すると予想されるときに実施されます。新規外部資金調達コストの実証研究として、増資>CB>社債>借入金、というのがjournal of quantitive ・・・(記憶が怪しい)にありました。これはペッキングオーダーでポイントになる、情報の非対称性による逆選択コストの順序と整合的です。

資本構成の調整はここ3年くらい前からホット(論文登場回数において)だと感じているのですが、マーケットタイミング仮説や慣性仮説が企業がめったに資本構成のリバランスを行わないことをある程度前提として扱っているのは興味深いところです。

負債比率の決定要因(続き2)_e0046070_2041351.jpg最後に、上場企業の株主構成の推移を載せます。(右図参照) データは東証のwebサイトより。縦軸は%です。

by tsuyoshi_829 | 2006-12-13 20:41  

<< くだらない話 負債比率の決定要因(続き) >>