事業等のリスク(三菱商事の例)

三菱商事の例も載せておく。読みやすく、定量的なリスク管理が出来ていることが文章からわかるのが素晴らしい。この会社は、部署をさらに細かく区切ったunitでリスク管理をしており、各unitでEVAやVarを出している。商社や金融機関などであると、こうした横串を通したリスク管理がしやすいが、製造業では事情が違うことが担当者との会食でわかった。ちなみにユニットごとにリスク管理するのは大変お金がかかるようだ。
商社のリスク管理は住友商事が老舗らしいが・・・、まぁ銅の件もあるし。バリュードライバーの損益に関する感応度を書いている三菱商事はやはりすごい。普段の意識の高さを伺わせる。

三菱商事のリスクマネジメントについては、
http://www.kier.kyoto-u.ac.jp/fe-nomura/katou/05.07.05.pdf




4【事業等のリスク】
①世界マクロ経済環境の変化によるリスク
当社はグローバルにビジネスを展開しており、当社の業績も世界のいくつかの国々の景気動向と連関しています。日本の景気動向が重要なことは言うまでもありませんが、海外における事業に注力した結果、日本の景気が当社業績に与える影響は、近年相対的に小さくなって来ています。一方、貿易相手国の中心であり、事業投資も数多く行っているアジア諸国の景気動向の当社業績への影響は大きくなっております。
中国はプラント、建設機械用部品、鉄鋼製品、鉄鋼原料、化学品などの主要輸出先であるので、中国経済の動向は当社の業績に直接的に影響を及ぼすのに加え、LNG・原油などのエネルギー資源、原料炭・銅・アルミなどの金属資源などの価格は中国の需要動向で大きく左右され、その点で当社の資源ビジネスも影響を受けるということが言えます。
タイ、インドネシアでは、当社は日本の自動車メーカーと協同で自動車の組立工場、販売会社、販売金融会社を設立し、広範な自動車事業を展開しています。自動車の販売数量はこれらの国の内需に連関するため、タイ、インドネシア両国の経済動向は当社の自動車事業から得られる収益に大きく影響を与えることになります。
②市場リスク
a. 商品市況リスク
当社では商取引や、資源エネルギーの権益を保有して生産物を販売すること、事業投資先の工業製品の製造・販売をすることなどの活動においてさまざまな商品価格変動リスクを負っております。
当社の業績に大きな影響を与える商品分野として次のようなものがあげられます。
(エネルギー資源)
当社は西豪州、マレーシア、ブルネイなどにおいてLNGや原油の上流権益あるいはLNG液化設備を保有しており、LNGや原油の価格変動はそれらの事業の業績に大きな影響を与えます。LNGの価格は基本的に原油価格にリンクしており、1バーレル当たりの原油価格が1米ドル変動することで、当社の連結純利益は主に持分法による投資損益の変動を通してLNG・原油合わせて10億円程度変動します。ただし、LNGや原油の価格変動が当社の連結純利益に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。
(金属資源)
当社は豪州の100%子会社Mitsubishi Development Pty社(MDP)を通じて、鉄鋼原料となる原料炭を中心に年間25~26百万トンの石炭を生産し販売しておりますが、石炭価格の変動はMDPの収益変動を通じて当社の連結純利益に影響を与えることになります。石炭の販売については、大半が年間契約ベースになっており、年一回の需要家との交渉によって決定された価格が、向う1年間の船積みに適用されることになっています。よって、翌連結会計年度については既にMDPの販売する石炭の価格は基本的に決まっているため、年度内での市況変動が当社業績に及ぼすインパクトは小さいと言えます。石炭の年間契約価格の変動が当社の連結純利益に及ぼす影響を、翌連結会計年度のMDPの業績見込みをベースに試算すると、MDPの販売する石炭の輸出平均価格でトン当たり1米ドルの変化は、約20億円の変動をもたらすこととなります。但し、MDPの業績は石炭の価格以外に豪ドル・米ドル・円の為替レートや生産コスト、及び販売数量等の変動によっても大きく影響を受けるため、上記の感応度のみで単純に決定されるものではありません。
銅・アルミニウムについても、生産者としての価格変動リスクを負っております。銅については1トン当たりの価格が100米ドル変動すると持分損益で4.5億円の変動、アルミニウムについては1トン当たりの価格が100米ドル変動すると持分損益で10億円の変動をもたらすと試算されます。(上記の持分損益への影響額の試算は、当社の連結対象会社の当連結会計年度の業績に基づき行っております。)(石油化学製品)
当社はナフサや天然ガスを原料として製造される石油化学製品の貿易取引を広範に行なっております。石油化学製品はこれら原料市況並びに需給バランス等の要因から、製品ごとに固有の市況を形成しており、その変動は当該取引から得られる収益に影響を及ぼします。
また、マレーシアやベネズエラではパラキシレン、ベンゼン、メタノールなど石油化学品の製造・販売会社に出資しており、これらの会社の業績も市況の影響を受け、当社の持分法による投資損益に影響を与えます。
b.為替リスク
当社は貿易取引において為替リスクを負うことがありますが、先物予約などを通じてヘッジしており、当社の経営に大きな影響を及ぼすようなリスクは負っていません。
ただし、海外における事業からの受取配当金や海外連結子会社・持分法適用会社の持分損益の連結純利益に占める割合が比較的高いことから、外国通貨に対して円高が進むと当社の連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。米ドル・円のレートが1円変動すると、当社の連結純利益に約12億円の変動をもたらします。また、当社の海外事業への投資については、円高が進行すると為替換算調整勘定を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、大口の新規投資については為替リスクのヘッジを原則とするなど、外貨建てのエクスポージャーが拡大しないよう施策を実行しております。
c. 株価リスク
当社は当連結会計年度末時点で、取引先や関連会社を中心に約1兆1,300億円の市場性のある株式を保有しており、株価変動のリスクを負っております。同時点での市場価格により評価すると約5,500億円の含み益となっておりますが、株価の動向次第で含み益は減少するリスクがあります。
また、株価の下落は年金資産の目減りを通じて年金の積立不足を増加させ、ひいては年金費用を増大させるリスクがあります。このため、年金資産の運用にあたり、いわゆる絶対利回り追求型の手法(市場インデックスの変動に影響されず、一定のリターンを上げることを目標とする運用手法)を採り入れた運用方針に変更しております。
d. 金利リスク
当社の当連結会計年度末時点の有利子負債総額(短期借入金及び長期借入債務(1年以内の期限到来分を含む)から債務の時価評価の影響を除いた金額)は約4兆1,000億円であり、一部を除いて変動金利となっております。しかし、このうちの相当部分は金利の変動により影響を受ける貸付金等と見合っており、金利の変動リスクは相殺されております。また、純粋に金利の変動リスクにさらされている部分についても、見合いの資産となっている投資有価証券や固定資産からもたらされる取引利益、配当金などの収益は景気変動と相関性が高いため、景気回復の局面において金利が上昇し支払利息が増加しても、見合いの資産から得られる収益も増加し相殺されるため、金利の変動リスクは小さいと考えられます。現状、単体ベースで円金利(短期)1%上昇することによる支払利息の増加は約80億円と試算されます。しかし、一方で金利の上昇には、年金債務残高を計算する割引率の引上げによる残高の減少を通じて、年金費用の減少をもたらすという効果もあります。
なお、当社は資金調達政策の立案や金利変動リスクの管理のために、ALM委員会を設置して金利などの市場動向を注視し、機動的に市場リスク対応を行う体制を固めております。
③信用リスク
当社では様々な営業取引を行うことによって、取引先の信用悪化や経営破綻等による損失が発生する信用リスクを負っております。当社では当該リスクを管理するために取引先毎に信用限度額・成約限度額を定め、また後述の社内格付制度を導入しており、社内格付と与信額により定めた社内規定に基づき、与信先の信用状態に応じて必要な担保・保証などの取り付けを行うことによりリスクヘッジを講じております。
社内格付制度は取引先の財務状況に基づき、定性的な面も考慮に入れて、1から10までの格付け設定を行うものであり、同制度の下、信用限度手続き、リスク量の把握及び低格付取引先に対して債権回収不能に備えた引当金の設定を行っております。
また、取引部局から独立した全社スタッフ部門の組織が毎年定期的に全社ベースで取引先総見直しを実施し、会社経営に大きな影響を与える取引先については重点管理先と指定して全社レベルでの管理を行っております。
なお、過去2年間の貸倒引当金繰入額は、前連結会計年度で74億円、当連結会計年度で94億円となっております。
④カントリーリスク
 当社では海外の会社との取引や出資に関連して、当該会社が所在している国の政治・経済情勢に起因した代金回収や事業遂行の遅延・不能等が発生するカントリーリスクを負っております。カントリーリスクについては、保険を付保するなど第三者へのヘッジを原則とし、案件の内容に応じて適切なリスクヘッジを講じております。このリスクを管理するために、カントリーリスク委員会を設置し、本委員会の下に後述のカントリーリスク対策制度による管理を実施しております。
カントリーリスク対策制度では、国ごとの信用度(国別レーティング)及びカントリーリスク管理上の裸リスクマネー(出資、融資、保証、及び貿易債権額からヘッジ額を控除した額の合計)に基づき取引対象国を6つの管理区分に分類し、区分毎に裸リスクによる枠を設定することでリスクの積み上がりをコントロールしています。この区分毎に定めた権限体系に基づいて、取引部局は必要な社内承認手続を取ります。また、国別レーティングごとに個別案件の推進に当たり最低限確保しなければならないリターンを取り決め、これを下回る案件は原則として認められません。さらに、カントリーリスク委員会は、定期的に国毎の全社リスク状況の把握及び国別レーティングの見直しを行い、社長以下当社トップマネジメントで構成される社長室会に報告しております。
なお、当連結会計年度末での当社の取引主要国におけるリスクマネーは次のようになっています。インドネシア、タイ、韓国、マレーシア、中国、香港、フィリピンのアジア7カ国・地域に対する出資・融資・保証の総額は5,091億円(貿易保険などでヘッジされていない額は4,329億円)、貿易債権額は2,712億円であり、メキシコ、ブラジルの中南米2カ国に対しての出資・融資・保証の総額は937億円(貿易保険などによりヘッジされていない金額は888億円)、貿易債権額は166億円です。また、ロシアに対しての出資・融資・保証の総額は1,785億円(貿易保険などによってヘッジされていない金額は1,773億円)で、貿易債権残高はありません。
⑤事業投資リスク
当社は、株式・持分を取得して当該企業の経営に参画し、事業の拡大やキャピタル・ゲイン獲得などを目指す事業投資活動を行っておりますが、この事業投資に関連して投下資金の回収不能、撤退の場合に追加損失が発生するリスク、及び計画した投資採算が確保できないなどのリスクを負っております。事業投資リスクの管理については、まず新規の事業投資を行う場合には、投資のリスクを定量的に把握し、リスクの度合いに応じて社内で定めた最低期待収益率を上回っているか否かを評価し、ポートフォリオ・マネジメント委員会にて選別を行っております。
投資実行後は、事業投資先毎に、毎年定期的に「経営計画書」を策定し、投資目的の確実な達成のための管理を行っております。
また、会社経営に大きな影響を与える事業投資先は重点管理先と指定して全社レベルでの管理を行っています。
さらに、事業投資先の業績について一定の基準を設け、投資先がその基準をクリアできずに企図していた投資採算が上がっていないと判断される場合は、早期の持分売却・清算による撤退を促す「EXITルール」を採用し、効率的な資産の入れ替えを行っております。
⑥三菱自動車工業への支援
当社は、三菱重工業、東京三菱銀行とともに、平成17年1月に発表された「三菱自動車再生計画」の評価を行いました。延べ150名の外部専門家による三菱自動車工業に対する詳細なデューデリジェンスの内容も踏まえ検討を行った結果、同社の要請に応じて3社で第三者割当増資を引受け、総額2,740億円の増資のうち、同社が平成17年3月に発行した普通株式と第2回G種優先株式を引受け、それぞれ513億円と187億円の払込を行いました。この結果、同社に対するリスクエクスポージャーは当連結会計年度末で約1,600億円となっています。
また、同社の300億円の資本増強に繋がる事業用資産の買取または増資引き受けを翌連結会計年度中に行うことを予定しております。
尚、当社は三菱自動車工業とは、直接取引だけでなく、アジアでの販売会社事業、欧州での販売金融事業など、世界各国で協力関係にあり、主に現地での販売会社及びその先の川下バリューチェーン分野での事業を展開しています。このような取引に関わる営業債権、共同事業への出資などに、上記の三菱自動車工業本体へのリスクエクスポージャーを合わせると、当社の三菱自動車工業関連でのリスクエクスポージャーは当連結会計年度末で約2,900億円となっています。
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by tsuyoshi_829 | 2005-09-12 17:38  

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