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マーケット・タイミング仮説(続き)

課題を以下に残しておきます。(前回のは大幅に修正しました。)

・“external finance weighted-average”の解釈が不十分なので、Rajan and zingales(1995)を参照する。
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・マーケット・タイミングの持続的効果についての検証が若干不十分と思われるので、以下を参照して考察を深める。
“How Persistent Is The Impact of Market Timing on Capital Structure?”
“Testing the Market Timing Theory of Capital Structure”
特に、マーケット・タイミングで一時的に資本構成が最適資本構成(存在すると仮定)から大きくそれたときに、長期的に戻るのかどうかは分析不足であると感じた。

・IPOからの分析だけでなく、現存する企業においても同様のことが発生するのだろうか?生き残りバイアスの回避の仕方に工夫の余地があるのかもしれない。

・本論文では、エクイティ・ファイナンスに焦点を当てているが、資金調達の選択問題として、その時の金利、ないしは金利の変化率を勘案したモデルに発展出来ないだろうか。

何やら課題がドンドン増えてくるが、前期は拡散系で行きましょう☆
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by tsuyoshi_829 | 2006-05-06 21:31  

マーケット・タイミング仮説

Market Timing and Capital Structure (MALCOLM BAKER and JEFFREY WURGLER,2002,journal of finance)

企業金融において、equity market timingとは株価が高いときに株式発行し低いときに自社株買いをする事を指していた。意図するところとしては、他の資金調達より株式資本コストが低いときに、一時的な株価の変動から利益を搾取することである。MM命題によると、いくつかの仮定をしいた市場において、各資金調達の資本コストは同じであり企業価値は資本コストによらないとある。対照的に、現実のマーケットは非効率・不完全性を有しているので、market timingにより既存の株主から利益を得ることができる。従って、もしmarket timingが可能であり、そこから派生する利益が既存の株主より重要であるならば、market timingをする動機を持つことになる。

実際、equity market timingは企業の資金調達政策において重要な一面であるだろう。market timingが重要であることを示す以下の4種類の証拠を列挙する。

1.企業の資金調達決定は、簿価や過去の時価に対する現在の時価が高いときに増資し、低いときに自社株買いを行う傾向がある。
2.資金調達決定に従う長期の株価の収益率は株のマーケットタイミングが平均的に成功していることを示す。
3.株式発行における収益の予想と実現からすると、投資家が株式に熱狂的になっている時に株式を発行する傾向がある。
4.恐らくもっとも説得力のあるのだが、経営者は匿名調査においてマーケットタイミング説を認めている。Graham and Harvey(2001)の分析によると、2/3のCFOが自身の株価がovervalued or undervaluedされることは、重大であるないしは重大な関心事であるとなっている。


この論文では、equity market timingが資本構成に影響を与えるのかどうか、equity market timingは長期or短期どちらのインパクトを資本構成に与えるか、ということを問うたものである。予想としては、最低でも短期的なインパクトはあるだろうと期待している。しかしながら、(短期的にインパクトがあったとして)続いて最適資本構成に基づき資本構成をリバランスするのなら、equity market timingは長期的なインパクトを与えることはないだろう。従って、資本構成におけるequity market timingの重要性は実証的なissueである。

実証分析の結果、equity market timingは大きくかつ持続的な影響を資本構成に与えていることがわかった。主な発見は、低レバレッジ企業はmarket valuationsが高いときに株式発行し、高レバレッジ企業はmarket valuationsが低いときに株式発行するというものである。我々はこのことを伝統的な資本構成の回帰分析において実証した。Leverageは従属変数であり、”external finance weighted-average” M/B*比は独立変数である。後者の数字に関して、例えばM/Bが高いときに外部資金調達をすると、後者の値は高くなる。詳細は後述する。基本的な回帰分析の結果、過去のmarket valuationsの測度(M/B)とレバレッジは強い負の関係があることがわかった。

資本構成における過去のmarket valuationsの影響は経済学的に重要であり、統計学的にもしっかりとしている。これは、レバレッジが簿価であろうと時価であろうと、従属変数に様々な財務変数が含まれていてもいなくても、上記の関係は明白である。また、上記の関係は極めて持続的なものである。我々はこの関係を3つの方法でテストした。

Test ① 
レバレッジと現在のM/Bの関係を検証する

Test ②
回帰分析において、IPO時の資本構成のレベルを検証し、後に続くmarket valuationsの変化がどのようにIPO時の資本構成を変化させるか観察する。

Test ③
加重平均M/B変数のラグを取った値がどういった影響を与えるのか

過去のmarket valuesが与えるインパクトは10年以上の半減期(half-life…全体の半分がある変成をうけるに要する時間)を持つことがわかった。例えば、2000年現在の資本構成は、1990年及びそれ以前のM/Bの変動に強く依存する。

計算結果によると、市場価値の変動は資本構成に長期的なインパクトをもたらすが、この結果をtraditionalな資本構成の枠組みで説明するのは難しい。

trade-off theoryにおいては、M/Bは投資機会、リスク、エージェンシー、など最適資本構成を決める指標のひとつである。trade-off theoryによると、M/Bの一時的な変動は資本構成に対して一時的な効果しか与えないという解釈になる。

pecking order theory によると、逆選択は経営者に新株発行を完全に避けるように導く。動学的に考えると、やがて現れる投資機会に恵まれた企業は将来の株式発行を避けるため にレバレッジを下げるかもしれない。それでもしかし、pecking order theoryがレバレッジと過去の投資機会の関係を説明するとは想像し難い。

managerial entrenchment theory によると、高いマーケットの評価は経営者が株式を加えるだけでなく、経営を既得権益化するとある。一部我々の理論と整合性を持つが、この理論は、既存の投資家に対して事後的にではあるが負債を用いたリバランスによらない搾取を行うとしている。

我々の見解によると、この結果に対する単純で現実的な説明は以下のとおりである。
“Capital structure is the cumulative outcome of attempts to time the equity market.”

我々の分析結果の背後にある、equity market timingの見解は大きく2つに分けられる。1つ目は、合理的な経営者と投資家を前提とした、Myers and Majluf(1984)の動学的バージョンである。逆選択の程度は企業や時期によって変わり、M/Bとは逆比例の関係にある。2つ目は、経営者は投資家を非合理的だと思い、株式コストが異常に低いときに株式で資金調達をする。2つ目は、もしM/Bが、経営者が株式のover(under)valuedを考える代理変数となるのなら、我々の結果を説明できる。過去の評価の持続的な実際の効果を説明するためには2つとも、調整コスト(恐らく逆選択と関連性のある)がmarket timingの機会損失を減少させることが必要条件となるだろう。我々の分析は上記の2つを分解できないが、earnings management evidenceや長期株式のリターンは後者に属するものである。


*・・・market value/book value 
=(総資産-自己資本(簿価)+自己資本(時価))/総資産

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分析データについて、
・SICコードの6000~6999(金融業)は削除
・資産の簿価の最低額が10億ドルを切る企業は削除
(日本だと、2958/3111が残る、意外にも企業の総資産は大きい。)
・IPO以降のデータが不完全なのも削除
・資本構成やM/Bが大きく外れている(outlier)のも削除

分析期間:IPO~IPO+10、1968~1998年
IPO   :2839
IPO+1 :2652
IPO+3 :2412
IPO+5 :1668
IPO+10:715              (社数)

企業数が減っている理由は、M&A、倒産、データが1999年までで終わっていること、などである。

財務指標等の定義(fama and french(2002)と同じ定義)

負債の簿価:=総資産-自己資本(簿価)
自己資本(簿価):=総資産-負債総額+優先株式+繰り延べ税金+転換社債
レバレッジ(簿価):=負債の簿価/総資産
レバレッジ(時価):=負債の簿価/(総資産-自己資本(簿価)+自己資本(時価))
自己資本(時価):=マーケットの株価×発行済み株式数
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by tsuyoshi_829 | 2006-05-04 22:06  

資本構成・マーケットタイミング・企業規模

2005年後半に代表される堅調な株式上昇を背景にエクイティ・ファイナンスが活発です。エクイティ・ファイナンスとは新株発行を伴う資金調達のことで、だいぶ前に取り上げたオークマの増資なんかが一例です。最適資本構成の理論だと、株価が上がると必然的に自己資本比率が上がるので、最適資本比率に戻すためdebtを増やすという考えになりますが、市況を勘案し、株式が高いときに増資し低いときに自社株式の買い入れを行うケースがあります。後者の考えをマーケット・タイミング仮説といいます。

論文ですと、http://pages.stern.nyu.edu/~jwurgler/papers/capstruct.pdf
が有名でしょうか。数式も簡単なので興味ある人は一度読んでみるといいと思います。僕も次の次くらいにこれを読むつもりです。

後、別件で悩んでいることがありまして、
わが国企業の負債圧縮行動について
において、日本企業の負債比率の低下要因の寄与度として企業規模(じかベース)、利益率(簿価ベース)が大きいのですが解釈がしっくりきません。①利益率の増加がペッキング・オーダー仮説を通じて負債比率を低下させていること、②情報の非対称性の緩和(企業規模の拡大)によるエージェンシー・コストの低下が、実効的な株式コストの低下をもたらしていること、が原因としてあるようなのですが②がどうも理解しがたい。

企業規模が資本構成に与える影響について、ひとつは企業規模が大きくなると倒産確率が下がりクレジットのプレミアムが減少するので負債比率を高めにできるという話があり、一方、大規模な企業ほど投資家と銀行間の情報の非対称性の度合いが低くなるため負債比率が低下し資本市場からの資金調達が増えることが予想されるという話があります。極端な話をすると、大規模になればセルサイド・アナリストがついて市場から評価されるようになり、株式投資家の情報量が増し銀行の持つ情報ほどではないにしろ、差が縮まるので株式の割合が増えるだろうという話です。上記のリンク先の実証分析では負債比率(被説明変数)に対する企業規模(説明変数)の係数はマイナスでした。これは、後者の話が優越していることが統計的に有意に示されたということです(1%水準)。

企業規模と資本構成、ちょっと実感がわきにくいのでもう少し文献をあさって勉強しています。なお、資本構成と負債比率がごっちゃになっている印象を受けるかもしれませんが、話は同じです。さらに、最適資本構成の議論では、負債比率と負債の満期を考察するのが基本ですが、ここでは満期は無視しています。
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by tsuyoshi_829 | 2006-04-08 21:34