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閑話休題:リターンについて

仙台のラガーマンから依頼がありまして、時価総額加重平均リターンと累積超過リターンについて解説しろと。彼(先輩)は将来の日本を背負うエリートバンカーになること間違いなしなので是非力になりたいと思い、解説に取り組んでみようと考えました。背景として証券投資のリターンを意識しています。

時価総額加重平均リターン=時価総額+加重平均リターン
と2つに分けて考えていただきたいと思います。時価との対立概念として簿価があり、会計では非常に重要な問題でした。時価総額だと損失が出てしまうような金融商品を簿価計上の金融商品に転換して損失を隠すなんてことをバブル崩壊時にやっていたからです。ここでは、証券投資のリターンを考えるので、時価総額で考えるのが適当でしょう。よって、加重平均リターンについて考察してみたいと思います。

加重平均リターンと単純平均リターン:
ファンドAとファンドBがあります。どちらも投資家からマネーを集めてファンドマネジャーが運用しています。既にマネーの募集を終了し、ファンドのマネーは運用成績のみに依存して変動していきます。さて、昨日と今日のマネーの状況が開示されました。

昨日:
ファンドA 100億円    ファンドB 10億円
今日:
ファンドA 105億円    ファンドB  9億円

ファンドAは+5億円、ファンドBは-1億円でした。

ファンドAのリターンは(105-100)/100=+5%
ファンドBのリターンは(9-10)/10=-10%
となります。

単純平均リターンはリターンの平均値です。
従って、(5-10)/2=-2.5% となります。

加重平均リターンは、ファンドをまとめて考えるとわかりやすいです。
昨日:
ファンド(A+B) 110億円
今日:
ファンド(A+B) 114億円

ファンド(A+B)のリターン=(114-110)/110=+3.6%

この+3.6%が加重平均リターンになります。
加重平均という言葉通りに算出するならば以下の式の方が解釈しやすいと思います。
閑話休題:リターンについて_e0046070_14412960.gif

以上のように、いくつかの投資対象のリターンを考えるときは単純平均リターンではなくて加重平均リターンを使って考えます。TOPIXは時価総額加重平均を使って算出されたインデックスの代表といえるでしょう。

さて、次は累積超過リターンです。これも累積+超過リターンに分けて考えるとわかりやすいでしょう。累積とは、一日一日のリターンを加算していって積み上げることです。積み上げ期間はケースバイケースで、一ヶ月、半年、一年、三年なんかがあるでしょう。累積リターンやと、リターン(上記の例でいうと+3.6%など)を毎日毎日積み上げていくのですが、累積超過リターンの場合は超過リターンを毎日毎日積み上げ(加算)していくわけです。

では、超過リターンの説明に入ります。超過、って何に対して超過するの?というところから話はスタートします。これは大きく二つあって、無リスクリターン、マーケット平均リターンの二つです。

無リスクリターン(通称、無リスク利子率)は、ノーリスクで得られるリターンのことです。僕ら庶民からすれば銀行の預金が該当しそうですが、銀行が倒産すると全額保証されない可能性もあるので(ペイオフ)、ちょっと違う気がします。金融工学的には「国債の利回り」=無リスク利子率としています。

マーケット平均、例えば上記のファンドが株式のファンドだとしましょう。そうすると、TOPIXや日経平均がマーケット平均になるでしょう。債券や不動産だと話は変わってきます、ある程度の市場性を持つマーケットであればインデックスといわれるマーケット平均を野村証券 金融経済研究所や外銀なんかが作成しています。僕がインターンに参加していたときはアジア債券のインデックスを作成していた気がします。

以上のようなリターンよりどれだけ超過していたかをみるのが超過リターンです。例を使ってみていきましょう。ファンド利回り、国債利回り、TOPIX利回りが以下のようなリターンで推移したとします。(一週間を想定しているのでリターンは4つです。)

ファンド利回り:+3.6% +2.0% -0.5% +1.2%
国債利回り:+0.10% +0.09% +0.11% +0.10%
TOPIX利回り:+2.6% +2.4% -0.7% +0.9%

無リスク利子率に対する超過リターン
=(3.6-0.10)+(2.0-0.09)+(-0.5-0.11)+(1.2-0.10)
=5.9%

マーケット平均に対する超過リターン
=(3.6-2.6)+(2.0-2.4)+(-0.5+0.7)+(1.2-0.9)
=1.1%

以上の結果より、マーケット平均に対する超過リターンが正なので、このファンドはこの一週間において、良い成績を残したと判断できます。無リスク利子率に対する超過リターンがわかると、どれくらいのリスクを取ればどれくらいのリターンが得られるかを考えることができます。

有名なCAPMという公式において、株式iの超過収益率はマーケットの超過収益率に比例するとされ、比例係数をβとしています。

r_i - r_f = β (r_m - r_f)+誤差

r_i :株式iの収益率
r_f :無リスク利子率
r_m :マーケットの収益率

by tsuyoshi_829 | 2006-01-08 14:47  

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