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Agency costs(導入)

Models Based on Agency CostsAgency costs(導入)_e0046070_20152926.jpg
Jensen and Meckling(1976) は2つのタイプの利害対立を報告している。株主vs経営者、株主vs債権保有者,である。

株主と経営者の利害対立が起こる原因は、経営者が100%の残余請求権を保持していないからである。経営者は経営資源の管理において、より少ない投資をすることが可能であり、経営資源を自身に移転することが可能である。例えば、社用ジェット機や豪華なオフィスに会社のお金を使うことによって。経営者はこうした活動を控えることによる費用の全額を負担することになるが、その便益をまるまる受け取ることが出来ない。従って、企業価値が最大化する状態と比較して、経営者自身の欲求を満足させるように好き勝手に振舞うのである。企業価値という点から非効率であるが、経営者の保有株式比率が上がれば上がるほど、非効率性は衰退するであろう。さらに、Jensen(1986)が指摘するように、負債は企業の借金返済をコミットさせるので、上記の非効率な活動に使用される"free" cashを減少させる。株主と経営者の利害対立に起因する非効率性の緩和は、デッドファイナンスの便益のうちの一つである。

もう一つの利害対立は株主と債権保有者である。株主と債権保有者の利害対立は大きく3つに分けられる。overinvestment,underinvestment,asset subustitutionである。ここでは、経営者は株主利益を最大化させる存在であることが仮定されていることに注意が必要である。利害対立の原因は、債権契約が株主に最適でない投資をする誘因を与えることによる。具体的にいうと、負債契約を結ぶと、もし投資が莫大な利益(負債の額面を大きく上回るような)を生むならば、株主は利益の大半を獲得するだろうということである。しかしながら、もし投資が失敗したら、株主の有限責任により、債権保有者が結果を負担するだろう。結果として、債権者から株主へ利益移転が発生する。上述した投資は、非常に危険であり企業価値を下げるものである。そうした投資は負債の価値を減少させ、その投資による株式価値の減損分は債権保有者の犠牲により得られる利益によって相殺されるだろう(それ以上の結果になることもある)。しかしながら、overinvestmentにおける株主の行動を予測した、合理的債権保有者を想定すると、最終的にこのコストは株主が負担することになる。従って、負債によって生まれた価値を棄損するプロジェクトに投資するインセンティブの費用負担は、負債を発行する株主から発生するものである。この効果は、一般的に「aseet substitution effect」と呼ばれ、負債の資金調達におけるエージェンシー・コストの一つである。

Jensen and Meckling(1976)は、最適資本構成は負債のエージェンシー・コストと負債の節税効果のトレード・オフにより決定されると主張した。implicationsは以下の通りである。1.asset subustitution effectを防止するような工夫、利回りを上げる、危険な新規投資の禁止などを含んだ債権契約が予想される。2.asset subustitutionの機会が限定される業界はより高いレバレッジを持つだろう。3.成熟しており、潤沢なキャッシュ・フローを持つ企業はより多くの負債を持つべきである。潤沢なキャッシュ・フローを持ち投資機会に恵まれない企業は、empiresを造り、従業員に過剰な給料を支払う恐れがあるからである。こうした状況にある業界は、鉄鋼、化学、醸造酒、タバコ、テレビ・ラジオ放送、製紙業界などである。この理論は、こうした業界は高いレバレッジにすべきであると示唆している。

参考文献:"Theory of the Firm: Managerial behavior, agency costs and ownership structure" Jensen and Meckling(1976)

# by tsuyoshi_829 | 2006-05-07 20:17  

マーケット・タイミング仮説(続き)

課題を以下に残しておきます。(前回のは大幅に修正しました。)

・“external finance weighted-average”の解釈が不十分なので、Rajan and zingales(1995)を参照する。
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・マーケット・タイミングの持続的効果についての検証が若干不十分と思われるので、以下を参照して考察を深める。
“How Persistent Is The Impact of Market Timing on Capital Structure?”
“Testing the Market Timing Theory of Capital Structure”
特に、マーケット・タイミングで一時的に資本構成が最適資本構成(存在すると仮定)から大きくそれたときに、長期的に戻るのかどうかは分析不足であると感じた。

・IPOからの分析だけでなく、現存する企業においても同様のことが発生するのだろうか?生き残りバイアスの回避の仕方に工夫の余地があるのかもしれない。

・本論文では、エクイティ・ファイナンスに焦点を当てているが、資金調達の選択問題として、その時の金利、ないしは金利の変化率を勘案したモデルに発展出来ないだろうか。

何やら課題がドンドン増えてくるが、前期は拡散系で行きましょう☆

# by tsuyoshi_829 | 2006-05-06 21:31  

マーケット・タイミング仮説

Market Timing and Capital Structure (MALCOLM BAKER and JEFFREY WURGLER,2002,journal of finance)

企業金融において、equity market timingとは株価が高いときに株式発行し低いときに自社株買いをする事を指していた。意図するところとしては、他の資金調達より株式資本コストが低いときに、一時的な株価の変動から利益を搾取することである。MM命題によると、いくつかの仮定をしいた市場において、各資金調達の資本コストは同じであり企業価値は資本コストによらないとある。対照的に、現実のマーケットは非効率・不完全性を有しているので、market timingにより既存の株主から利益を得ることができる。従って、もしmarket timingが可能であり、そこから派生する利益が既存の株主より重要であるならば、market timingをする動機を持つことになる。

実際、equity market timingは企業の資金調達政策において重要な一面であるだろう。market timingが重要であることを示す以下の4種類の証拠を列挙する。

1.企業の資金調達決定は、簿価や過去の時価に対する現在の時価が高いときに増資し、低いときに自社株買いを行う傾向がある。
2.資金調達決定に従う長期の株価の収益率は株のマーケットタイミングが平均的に成功していることを示す。
3.株式発行における収益の予想と実現からすると、投資家が株式に熱狂的になっている時に株式を発行する傾向がある。
4.恐らくもっとも説得力のあるのだが、経営者は匿名調査においてマーケットタイミング説を認めている。Graham and Harvey(2001)の分析によると、2/3のCFOが自身の株価がovervalued or undervaluedされることは、重大であるないしは重大な関心事であるとなっている。


この論文では、equity market timingが資本構成に影響を与えるのかどうか、equity market timingは長期or短期どちらのインパクトを資本構成に与えるか、ということを問うたものである。予想としては、最低でも短期的なインパクトはあるだろうと期待している。しかしながら、(短期的にインパクトがあったとして)続いて最適資本構成に基づき資本構成をリバランスするのなら、equity market timingは長期的なインパクトを与えることはないだろう。従って、資本構成におけるequity market timingの重要性は実証的なissueである。

実証分析の結果、equity market timingは大きくかつ持続的な影響を資本構成に与えていることがわかった。主な発見は、低レバレッジ企業はmarket valuationsが高いときに株式発行し、高レバレッジ企業はmarket valuationsが低いときに株式発行するというものである。我々はこのことを伝統的な資本構成の回帰分析において実証した。Leverageは従属変数であり、”external finance weighted-average” M/B*比は独立変数である。後者の数字に関して、例えばM/Bが高いときに外部資金調達をすると、後者の値は高くなる。詳細は後述する。基本的な回帰分析の結果、過去のmarket valuationsの測度(M/B)とレバレッジは強い負の関係があることがわかった。

資本構成における過去のmarket valuationsの影響は経済学的に重要であり、統計学的にもしっかりとしている。これは、レバレッジが簿価であろうと時価であろうと、従属変数に様々な財務変数が含まれていてもいなくても、上記の関係は明白である。また、上記の関係は極めて持続的なものである。我々はこの関係を3つの方法でテストした。

Test ① 
レバレッジと現在のM/Bの関係を検証する

Test ②
回帰分析において、IPO時の資本構成のレベルを検証し、後に続くmarket valuationsの変化がどのようにIPO時の資本構成を変化させるか観察する。

Test ③
加重平均M/B変数のラグを取った値がどういった影響を与えるのか

過去のmarket valuesが与えるインパクトは10年以上の半減期(half-life…全体の半分がある変成をうけるに要する時間)を持つことがわかった。例えば、2000年現在の資本構成は、1990年及びそれ以前のM/Bの変動に強く依存する。

計算結果によると、市場価値の変動は資本構成に長期的なインパクトをもたらすが、この結果をtraditionalな資本構成の枠組みで説明するのは難しい。

trade-off theoryにおいては、M/Bは投資機会、リスク、エージェンシー、など最適資本構成を決める指標のひとつである。trade-off theoryによると、M/Bの一時的な変動は資本構成に対して一時的な効果しか与えないという解釈になる。

pecking order theory によると、逆選択は経営者に新株発行を完全に避けるように導く。動学的に考えると、やがて現れる投資機会に恵まれた企業は将来の株式発行を避けるため にレバレッジを下げるかもしれない。それでもしかし、pecking order theoryがレバレッジと過去の投資機会の関係を説明するとは想像し難い。

managerial entrenchment theory によると、高いマーケットの評価は経営者が株式を加えるだけでなく、経営を既得権益化するとある。一部我々の理論と整合性を持つが、この理論は、既存の投資家に対して事後的にではあるが負債を用いたリバランスによらない搾取を行うとしている。

我々の見解によると、この結果に対する単純で現実的な説明は以下のとおりである。
“Capital structure is the cumulative outcome of attempts to time the equity market.”

我々の分析結果の背後にある、equity market timingの見解は大きく2つに分けられる。1つ目は、合理的な経営者と投資家を前提とした、Myers and Majluf(1984)の動学的バージョンである。逆選択の程度は企業や時期によって変わり、M/Bとは逆比例の関係にある。2つ目は、経営者は投資家を非合理的だと思い、株式コストが異常に低いときに株式で資金調達をする。2つ目は、もしM/Bが、経営者が株式のover(under)valuedを考える代理変数となるのなら、我々の結果を説明できる。過去の評価の持続的な実際の効果を説明するためには2つとも、調整コスト(恐らく逆選択と関連性のある)がmarket timingの機会損失を減少させることが必要条件となるだろう。我々の分析は上記の2つを分解できないが、earnings management evidenceや長期株式のリターンは後者に属するものである。


*・・・market value/book value 
=(総資産-自己資本(簿価)+自己資本(時価))/総資産

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分析データについて、
・SICコードの6000~6999(金融業)は削除
・資産の簿価の最低額が10億ドルを切る企業は削除
(日本だと、2958/3111が残る、意外にも企業の総資産は大きい。)
・IPO以降のデータが不完全なのも削除
・資本構成やM/Bが大きく外れている(outlier)のも削除

分析期間:IPO~IPO+10、1968~1998年
IPO   :2839
IPO+1 :2652
IPO+3 :2412
IPO+5 :1668
IPO+10:715              (社数)

企業数が減っている理由は、M&A、倒産、データが1999年までで終わっていること、などである。

財務指標等の定義(fama and french(2002)と同じ定義)

負債の簿価:=総資産-自己資本(簿価)
自己資本(簿価):=総資産-負債総額+優先株式+繰り延べ税金+転換社債
レバレッジ(簿価):=負債の簿価/総資産
レバレッジ(時価):=負債の簿価/(総資産-自己資本(簿価)+自己資本(時価))
自己資本(時価):=マーケットの株価×発行済み株式数

# by tsuyoshi_829 | 2006-05-04 22:06  

パブリックセクターの取り組み(青森県の事例)

青森県:政策マーケティング


先進性秘めた青森県の政策マーケティング手法(上)
民意の測定に基づく「行政評価の新手法」 ―政策決定のビッグバンに備える―
http://web.sfc.keio.ac.jp/~tama/aomori1.html

先進性秘めた青森県の政策マーケティング(下)
第3者委の自由な議論と情報公開が新手法に ―誕生のプロセスと今後の展望―
http://web.sfc.keio.ac.jp/~tama/aomori2.html

政策マーケティングシステム
http://www.pref.aomori.lg.jp/marketing/index.html

政策マーケティングブック最新版
http://www.pref.aomori.lg.jp/marketing/004/ver.05.pdf

行政経営における戦略マネジメントのデザイン(講義資料)
http://www.esri.go.jp/jp/workshop/050318/050318tamamura.pdf

普通の行政評価と比べてすごいところは、ベンチマーク式の行政評価にとどまらず、将来の目標値に向けての問題解決の担い手の役割分担を示しているところです。予想通り?行政が介入すべき割合は低く、学校やコミュニティ、NGOの役割が重要であることが見て取れます。

行政評価のやり方は大きく3つありまして、
・事務事業評価・・・職員自らが個々の事務や事業について、目的、意義、成果を自己点検するというものです。cf.三重県庁
・業務棚卸・・・事務や事業でなく、むしろ組織や係りレベル仕事に着目し、その業務を棚卸する手法

上記2つの手法は、現場の職員が自らの仕事や担当事業、予算を見直すという意味で使い勝手がよい。予算や組織定員の見直しにも反映しやすい、ということで早くから普及しました。

・ベンチマーク方式・・・当事者による自己点検でなく、現状値を他の自治体と比較し目標値を設定します。達成に向けて、自治体だけではなく、住民やNGOなどの協力をも喚起していこうというものです。

# by tsuyoshi_829 | 2006-04-30 00:11  

業種別負債比率

負債比率=負債合計/総資産

データは直近のものを使用しています。約3000社です。予想通り、運輸や金融系の負債比率が高かったようです。
結果は以下の通り(外部ブログに移動ください)

業種別負債比率_e0046070_16382965.gif

# by tsuyoshi_829 | 2006-04-28 16:40